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夏を生きるもの②

狂ほしく 羽を乱して 舞ふ蝶は 酷暑の今を 惜しみゐるごと (くるほしく はねをみだして まふちょうは こくしょのいまを をしみゐるごと)   日盛りの 庭の小さき 鉢の花 二匹の蝶の 静かに憩ふ (ひざかりの にはのちいさき はちのはな にひきのちょうの しづかにいこふ)   七年の 命は三日に 華やぎて 日の暮るるまで 蝉鳴き尽くす (しちねん の いのちはみっかに はなやぎて ひのくるるまで せみなきつくす )  

夏を生きるもの①

肩口を 掠め飛び去る 燕 黒き翼が 空を切り裂く (かたぐちを かすめとびさる つばくらめ くろきつばさが そらをきりさく)   耳元の チッと鋭き ひとこゑは 翼つぼめし 燕の一閃 (みみもとの ちっとするどき ひとこゑは つばさつぼめし つばめのいっせん)   一夏の 命を生くる ぎんやんま 羽を伸ばして 宙すべりゆく (ひとなつの いのちをいくる ぎんやんま はねをのばして そらすべりゆく)       年毎に酷暑の呼び声が高まっているように思いますが その暑さを命の源のように飛び回っている生き物がいます。 見ているとなんだかせつない・・・
葦毛馬に 金覆輪の 鞍置きて 敦盛最期は ただにかなしき (あしげうま に きんぷくりんの くらおきて あつもりさいごは ただにかなしき )   木曽殿と 生死をともに せし馬は 気性も荒き 連銭葦毛 (きそどのと せいしをともに せしうまは きしゃうもあらき れんぜんあしげ)   宇治川を 先陣競ひて 押し渡る 連銭葦毛の 銘は「いけづき」 (うじがわを せんじんきそひて おしわたる れんぜんあしげの めいはいけづき)       平家物語には連銭葦毛が高貴な人の乗馬として登場しますが、 金で飾られた豪華な鞍がおかれています。 平敦盛が須磨の海に乗り入れていく様子を描いた絵は連銭が印象的です。

ゴールドシップ②

人の手を 拒むしるしの 赤リボン 連銭葦毛の 飾りとも見ゆ (ひとのてを こばむしるしの あかりぼん れんぜんあしげの かざりともみゆ)   ゲートには 嫌な記憶の あるらしく 押せども引けども 馬は動かず (げーとには いやなきおくの あるらしく おせどもひけども うまはうごかず)   目隠しを すれば意外に おとなしく ゲートに入る 連銭葦毛 (めかくしを すればいがいに おとなしく げーとにはいる れんぜんあしげ)       ゴールドシップのように銭形模様の浮かび上がった葦毛を 古来、連銭葦毛と呼んでいました。 賢い馬として知られていました。 もっとも、当時の馬はサラブレッドではありませんが。  

ゴールドシップ①

日高なる 小さき牧に 生ひ育つ 連銭葦毛の 荒馬一頭 (ひだかなる ちひさきまきに おひそだつ れんぜんあしげの あらうまいっとう)   祖父馬の 葦毛受け継ぐ 若駒に ゴールドシップの 名は与へらる (そふうまの あしげうけつぐ わかこまに ごーるどしっぷの なはあたへらる)   するすると 他馬を抜き去り 先頭に 立てば抜かせぬ 野生の本能 (するすると たばをぬきさり せんとうに たてばぬかせぬ やせいのほんのう)       若い頃に競馬場に近い所に住んでいて競馬場でアルバイトをしたりしていましたが、 当時お気に入りだったのがメジロアサマという葦毛の天皇賞馬でした。 ゴールドシップは彼の玄孫にあたります。

新馬戦

新馬戦 幼さ残る 二歳馬の その走りこそ 命の担保 (しんばせん おさなさのこる にさいばの そのはしりこそ いのちのたんぽ)   生まれ持つ 個性は馬も それぞれを ただ勝てとのみ レースは求む (うまれもつ こせいはうまも それぞれを ただかてとのみ れーすはもとむ)   乳離れに 母を探して 駆け回り 声嗄るるまで 呼ぶ当歳馬 (ちばなれに ははをさがして かけまわり こえかるるまで よぶとうさいば)       二歳馬の新馬戦も始まっており、楽しく見ていますが 人間で言えば小学生の運動会を見ている気分です。   大人びて堂々と出場する馬もいれば、場に慣れずに緊張しまくっている馬もいたり 成長の違いは人も馬も同じだなぁと感じます。

嬉しいことがありました

二ヶ月で 母に逝かれし 当歳馬は 仲間の授乳 じっと見つむる (にかげつで ははにいかれし とねっこは なかまのじゅにゅう じっとみつむる)   年毎に 七千頭も 生まれ来て 勝ち星競ふ サラブレッドらは (としごとに ななせんとうも うまれきて かちぼしきそふ さらぶれっどらは)   三歳の 未勝利戦も あと僅か 命を繋ぐ 勝利を目指す (さんさいの みしょうりせんも あとわづか いのちをつなぐ しょうりをめざす)       好きで拝見している「風の牧場」というブログで、 2014 年に生まれ生後 2 か月で母馬を失った仔馬を知り ずっと応援していましたが、そのトーホウレジーナが 7 月 16 日の未勝利戦で無事に勝ち上がりました。   中央競馬で勝ち上れる馬は、生まれた仔馬の 1 割くらいなのに 生育の過程を思うと奇跡のようです。